宅建業の免許は承継できない!宅建業者の組織再編(会社分割)
2017.11.20更新
宅建業の免許は承継できない
許認可には、運送業の許可のように組織再編を想定しているものと、宅建業の免許のように組織再編を想定していないものとがあります。
宅建業免許には組織再編を想定した手続きが用意されていないので、無免許期間を作らないようにするためには、組織再編の効力発生前に宅建業を承継しようとする会社(承継会社や存続会社)で予め免許を取得しておかなければなりません。
今回から次回にかけては、会社分割や合併を検討されている宅建業を営んでいる事業会社向けに、宅建業者の組織再編について書いていきたいと思います。
会社分割とは
会社分割とは、会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を他の会社に包括的に承継させる行為のことを言います。
会社分割には、大きく分けて、分割契約を締結し別会社に対して包括的に権利義務を承継させる「吸収分割」と、分割計画を作成し、新設する会社に対して包括的に権利義務を承継させる「新設分割」とがあります。
宅建業者の組織再編に新設分割はオススメできません
宅建業者が会社分割する場合には、結論からすると新設分割はオススメできません。
何故かと言うと、新設分割の場合は新設会社の設立日が分割の効力発生日となるからです。
それの何が問題なのか、、、。
勘の良い方であればお気づきかもしれませんが、宅建業免許は新設会社の登記簿謄本が取得できた後でしか申請することができません。
つまり、設立日に分割の効力は発生しているものの、免許を取得できるのは知事免許でも最短でおよそ1ヶ月かかりますので、免許がおりるまでの間、宅建業を営むことができなくなってしまうのです。
これがもし仮に大臣免許の申請であると、申請から3ヶ月〜4ヶ月の間は宅建業を営むことができません。
宅建業で収益をあげてなく、とりあえず宅建業免許をもっていればよいという会社であれば特段問題ではないかも知れません。
しかし、宅建業で売上げのある会社がほとんどだと思います。
1ヶ月以上事業が停止してしまうとしたら、、、。
組織再編を優先すべき特別な事情があるなら話は別ですが、許認可の観点からすると、この選択肢が賢明とは言えません。
吸収分割を選択するとどうなるか
吸収分割の場合は、先に承継会社を設立して、その後、分割契約に基づいて分割の効力が発生します。
従って、宅建業の免許申請から免許証の受領までにかかる時間を逆算して早めに承継会社を設立し、免許証の受領後に分割の効力を発生させれば、新設分割の場合に生じてしまう無免許期間を無くすことができます。
ただし、宅建業の免許要件を分割会社と承継会社とでそれぞれ満たすことが必要なので、難易度が少し上がります。
具体的には、分割会社で引き続き免許要件を維持しつつ、承継会社でも専任の取引士を確保することと、事務所要件を満たすことの2つの要件をクリアしなければなりません。
先ずは専任の取引士を確保しましょう。
その方法は、承継会社で直接雇用するか、もしくは分割会社から承継会社に出向や転籍をする方法などが考えられます。
そして、事務所要件をクリアしましょう。
例えば、分割会社と同じ所在地に承継会社を設立した場合は、分割会社と承継会社とで、事務所を分ける必要があります。
事務所を分けた結果、分割会社の床面積が減った場合には、分割会社でも変更届が必要となります。
事務所の分け方ですが、ワンフロアの事務所で「この辺りが分割会社のスペースで、その辺りが承継会社のスペースです」と言って認められるような簡単な話ではありません。
グループ会社でも、他の法人です。
宅建業では特に事務所の独立性についてのチェックが厳しいので、別々の入り口(ドア)、180cm以上の壁(パーテーション)、独立した事務スペースと応接スペースを用意する必要があります。
承継会社で宅建業の免許要件を満たすことができなければ、会社分割のスケジュールを見直すことになるでしょう。
分割の手続きに入る前に管轄行政庁や行政書士に相談されることをオススメします!